出雲弁05-1

わださかの出雲弁講座

出雲地方（島根県の東半分，昔の出雲の国）は独特の方言を持っています。いわゆるずーずー弁で
発音は東北弁に似ているといわれ、「砂の器」でも物語の重要なポイントになっています。

訛りは，主にイ段とウ段に顕著にあらわれています。
つまり，イとエ，シとス，チとツ，ジとズの発音が曖昧になっているのです。
よく言われるのは，煙突のススと寿司と獅子を出雲の人はうまく区別して発音できません
。
単に訛っているだけではなく，全く独自の単語が数多くありますので，それらを組み合わせた生粋の
出雲人同士の会話は他所の人にはちんぷんかんぷんだと思われます。

ここでは，講座とはいいながら，全くの興味本位で読んでいただくことを目的に出雲弁のごく一部を
紹介していきたいと思います。

登録日付	出雲弁	用例
	標準語	用例訳
2006.04.21	えのんとぎゃー	そげな作品をキヤコンに出さかともっとーかや。おまえもえのんとぎゃーだけんわからんかもっしぇんだども，そら出すほど無駄てていーもんだ。
	井の中の蛙世間知らず	そんな作品をキヤコンに出そうと思っているのかい。おまえも世間知らずだからわからないかもしれないけど，それは出すだけ無駄というものんだ。
	解説：これはかなり上級の言葉です。出雲弁では，えのんと＝井戸，ぎゃーこ＝蛙なので　　　　えのんと+ぎゃーこ＝井戸の蛙＝井の中の蛙＝世間知らず，というわけです。
2006.03.01	えらくらしい	あっ，また失敗した，えらくらしのぉ，なしてエッチングパーツねはこげんこめ部品ばっかぁああかや。
	イライラするむしゃくしゃする	あっ，また失敗した，イライラする，どうしてエッチングパーツにはこんなに小さな部品ばっかりあるんだい。
2006.01.09	さいのべ	Ａ：お客さんに行ったらえちゃんこしとらなえけんだども，こないだしねっこねあいまちしたけん足をさいのべにせなえたてえけんとまっしゃい。Ｂ：そらまたわりしこだったね，じぎさんでもえけんのべとうなはい。
	（手や足を）まっすぐ伸ばす。	Ａ：お客さんに行ったら正座してないといけないけれど，このあいだひざぼうずに怪我をしたので足をまっすぐ伸ばさないと痛くてたまらないんですよ。Ｂ：それはまた災難でしたね。遠慮しなくてもいいですから伸ばしていてください。
2006.10.09	おべる	Ａ：最近のドラゴンの新製品はおべーほど部品がよけひゃっとーが。Ｂ：そげそげ，そーだにかーにあの値段のやすこた，どげなかい。
	驚く	Ａ：最近のドラゴンの新製品は驚くほど部品がたくさん入ってるね。Ｂ：そうそう，それなのにあの値段のやすいこと，どう思う。
2006.07.02	おもしのくい	Ａ：こないだからえらいおもしのくんなったのぉ。そろそろ梅雨んひゃっただねだらか。Ｂ：そげだが，よんべの天気予報で梅雨んなったててえっとったじ。おぞがいね降うといけんが，雨もちたて降らな田んなかがひかんぱちってしまあだけん。
	蒸し暑い	Ａ：この間からすごく蒸し暑くなったね。そろそろ梅雨に入ったのではないだろうか。Ｂ：そうだよね，夕べの天気予報で梅雨になったと言ってたよ。あまり強く降るといけないけれど，雨も少しずつ降らないと田圃が干上がってしまうからね。
2006.05.22	えにょば	Ａ：〇〇とこの妹だが，こないだふさしぶぅに見たら，えらいえにょばんなっとっておべたとまっしゃい。Ｂ：おい，ごぼじが出とうじ。そげんえにょばかや，おらいちゃ見たことがねけんわからんがね。紹介してごせや｡
	いい女いい娘さん	Ａ：〇〇とこの妹だけど，このあいだひさしぶりに見たら，えらくいい女になっていてびっくりしたよ。Ｂ：おい，よだれが出てるよ。そんなにいい女かい，俺は見たことがないからわからないよ。紹介してくれよ｡
2006.05.12	やっとしゃ	Ａ：あのしは，やっとしゃ模型屋ね通っちょらいがどげしたしかね。Ｂ：どうも，最近はやぁめのアキバ系ちいやちだねかね。ま，わりしだねやなけん安心してごしなはい。
	たびたび　（しつこいくらいに）	Ａ：あの人は，たびたび模型店へ通っておられますがどういう人ですか。Ｂ：どうも，最近流行りのアキバ系というものではないですか。ま，悪い人ではないようですから安心してください。
2006.04.03	かいさめ	Ａ：きんにょは真っ赤な袖なし着ちょったが，今日はくれやつ着て，えっぱい袖なし持っちょってだね。Ｂ：きにょうの袖なしをかいさめに着ちょーほどだわね。こげなやちのことをリバーシブルてていいげなよ。知っちょらっしゃったかね。
	裏返し，さかさま	Ａ：昨日は真っ赤な袖なし（ちゃんちゃんこ）を着ていたけど，今日は黒いのを着て，いっぱい袖なしを持っておいでだね。Ｂ：昨日の袖なしを裏返しに着ているだけですよ。こんな物のことをリバーシブルというそうだよ。知ってましたか。
2006.02.21	ふてぶー	Ａ：こら，その袋そげんふてぶーだねが，せっかくの折が，わやだが。Ｂ：こらまたわりことしたの。そーだども，腹ん中ねはったらえっしょなことだわや。
	振る	Ａ：こら，その袋，そんなに振るんじゃないよ，せっかくの折詰がだいなしだよ。Ｂ：それは悪いことをしたね。だけど，お腹の中に入ってしまえば一緒なことだよ。
2006.01.09	もそぶ	Ａ：そこの石，あすこまでもそんでごいて。Ｂ：あげなもてもん，もそばいだらかの。えっこらせ･･あいてて，腰がえたんなった。きんより腰になってしまあせんか。
	運ぶ（持ち上げて）	Ａ：そこの石，あそこまで運んでくださいな。Ｂ：あんな重たいもの運べるかな。よっこいしょ・・あいたた，腰が痛くなった。ぎっくり腰になってしまったんじゃないか。
2005.12.17	ぼろける	Ａ：あらおまいさん，手に包帯してなにあいまちさっしゃったかね。Ｂ：こないだ屋根直さかともて，梯子からぼろけて骨にひびがえってしまったがね。まーじ，はちかしことしましたわ。
	落ちる	Ａ：あらあなた，手に包帯をして，怪我をされたのですか。Ｂ：この間，屋根を直そうと思って，梯子から落ちて骨にひびが入ってしまったんです。いやぁ，恥ずかしいことをしました。
2005.12.04	よもよもだらぞ	おまえ，また模型屋へ行って何買って来たかや。なにや！○万円もすうもんをめっちも買ったてて，よもよもだらぞ。
	よくもまあよくもそんなことを	おまえ，また模型屋へ行って何を買って来たんだ。なんだって！ ○万円もするものをみっつも買ったって，よくもまあ。
2005.11.21	きしゃがわるい	あっ，またしぞこないしてしまったわ。け，きしゃがわりのぉ。もちとおちらとさっしゃい，そげしゃ，まいことえくわや。
	しゃくにさわるむしゃくしゃする	あっ，また失敗してしまったよ。ほんとにむしゃくしゃするなぁ。もう少しゆっくりやりなさい。そうすればうまくいくよ。
2005.11.12	ももしー（ももしる）	服の袖のとこね泥が付いとーじ。こらまたなんだら，どげすーだら。ほんな，おらがももしってやらか。そーからおったったくと取れーだらが。（この場合などに見られる出雲弁の「し」の発音は「し」の口の形で「す」を発音する感じです。）
	（布などを）こすり合わせるようにもむ	服の袖のところに泥が付いてるよ。あら，ほんと，どうしようか。せれじゃ，私がもみほぐしてあげようか。そうしてたたくと取れるよね。
2005.10.03	まくれる	そげんえそいでかけったらまくれーじ，きちけれよー！。（ころん）やっぱまくれただらが，ほらまっしゃい，親のいいこた聞くもんだわい。
	ころぶ	そんなに急いで走ったら転ぶよ，気をつけなさいよー！。（ころん）やっぱり転んだでしょう，そらみたことか，親の言うことは聞くものだよ。
2005.09.22	おべた	こないだの関西ＡＦＶの会はオラえかれんだったども，山根さんの話し聞きゃ，えらいレベルが高ておべたげなじね。
	びっくりした	この間の関西ＡＦＶの会は僕は行かれなかったけれども，山根さんの話し聞を聞けば，大変レベルが高くてびっくりしたそうだよ。
2005.09.16	ばんじまして	Ａ：ばんじましてございましてね。きょはえらいのくございしたが。Ｂ：あげでございしたね｡あんたもえらいせわやきなはったね。
	標準語で当てはまる言葉は無い（夕方の挨拶）	Ａ：こんばんは（ともちがうのですが）今日は大変暑かったですね｡Ｂ：そうでしたね。あなたも良く働かれましたね｡
2005.09.15	だんだん	Ａ：あーら，○○さん，え天気んなぁましてねぇ，せんどはまためじ　らしもんろーちきもらいましてねぇ，だんだん，だんだん。Ｂ：なんがねおまいさん。あんまちょんぼしでえけんだったども，　おちのわけもんがなくさんねえっためやげですわ。
	ありがとう	Ａ：あら，○○さん，いい天気になりましたね，先日は珍しいものを　たくさんいただきまして，ありがとうございました。Ｂ：いいえどういたしまして。あんまり少しでいけませんでしたけれ　ど，うちの息子が遊びに出かけた土産です。